マイクロアルゲミー(株)

社長の独り言
〔バイオベンチャーの苦悩〕
  (最も成功への道のりが遠いベンチャー事業、しかし・・・)

藻類におけるバイオベンチャー事業は、ベンチャー事業の中でも飛び抜けて成功させるのが困難な分野と言えるでしょう。
特に私のように藻類培養事業の成功へのブレークスルーを装置開発と捉え、進める場合は尚更です。
まず卓越した発想から生まれる新型バイオリアクターの構想がなければスタートも切れません。
私の場合は最初は屋外でのバイオドームシステム、その次が屋内でのLEDを使用したバイオリアクター、通称“MOMO.”。
この二つのバイオリアクターは、その特筆に値する性能を備えるに当たり、それぞれに開発の天才と呼べるエンジニアの存在がありました。
それだけのアドバンテージがあったとしても、その開発費用・テスト機の製作・ミニプラントの立ち上げ・生産プラントの立ち上げ、そしてそれら全てにイニシャルコスト・ランニングコストが掛かります。
そして資金回収は実際の生産体制が整い、生産物であるバイオマスが手に入り、そこから有用物質の抽出を行って初めて製品が出来上がります。
眼が眩むほど長い道のりです。
そして扱うものは周りの環境に敏感に反応する生き物です。
そしてこれまで触れて来た通り、その微細な植物はあらゆる要因によって培養を阻害され、最悪のケースは全滅します。

そして、これだけの工程をカバーするために必要となる資金は膨大ですが、それに対する資金調達が困難です。
通常はベンチャーキャピタルがその役を果たすのですが、日本ではバイオベンチャー事業は成功パターンがITの様に読めない、分からない、と言う事で敬遠されます。
これまで装置開発に取り組まず、既存の培養システムで培養→商品生産と言う私からすると安易なステップを踏む場合が多いのは、そうした背景が強く影響しているのかも知れません。

実際に装置開発→大規模化と言うステップを繰り返し、大規模化における装置ノウハウ・オペレーションノウハウを積み上げるには、言語に絶する資金調達の苦労がありました。
しかし、ここでの苦労に妥協してしまうと、結果としては手前の利益ばかりを求められ、結局はこれまでの藻類培養事業の停滞パターンとなる事も明白でした。
私が行いたかったのは、革新的なブレークスルーを得られた装置による、微細藻類の可能性を全て引き出せる藻類培養事業です。

そして、ここにやっと思い描いて来た新型培養装置により、大規模化出来る準備が整いました。
前述のように、天才的な技術者から協力を得られた幸運もありました。
卓上レベルの培養装置モデル機から、大規模培養にスケールアップするのは果てしないトライアル・アンド・エラーが必要です。
しかし、我々の培養システムとオペレーションノウハウは、当初より大規模化を想定し蓄積され、実際にオペレーションを行って培ったもので、即実践可能なものです。

IT産業ももちろん重要です。
しかし、同時にこれからの時代は地球環境と人々の健康、特に子供たちの世代の健康と幸せな生活を担保して行ける生産事業が必要ではないでしょうか。